010年2月16日 リベラルタイム
小沢民主党は「民主主義の危機」を口にするが、
話はまったく逆だ!
現職議員を含む三人の側近が逮捕されてなお、小沢一郎は幹事長を辞任しない。鳩山由紀夫首相は小沢と官邸で十六分間の「密談」のあとにいった。
「小沢さんの潔白を信じる。幹事長の職にとどまり断固、検察と闘うとおっしゃるから、どうぞ闘って下さいと申し上げた」
この首相はいよいよ正気を失っている。検察は行政官だ。首相は行政のトップだ。トップが「どうぞ私の部下と闘ってくれ」というにひとしい。部下はこれを何と聞く? 牽制としか聞こえまい。その日おこなわれた民主党大会で、小沢は涙をにじませて検察批判をブチ上げ、
「わが党の大会に合わせて逮捕された。こんなことが罷り通るなら、日本の民主主義は暗澹たるものになってしまう」
会場からは「そうだ!」「頑張れ!」の声援が飛び、異議の一つも出ない。中にはテレビに向けて、まくし立てる議員もいる。
「これは国民に選ばれた民主党という民主主義勢力と、検察に代表される官僚体制との全面戦争です。正義はどちらにあるか、その闘いなんです」
一日おいて民主党の二回生議員が集まり、石川知裕議員の逮捕を「検察の暴挙」と断じ、その救出を考える会合を開いた。トップ二人の意向に呼応している。
小沢だけではない。すでに鳩山の秘書二人も起訴され、一人は公判中だ。脱税総理と脱税幹事長。それでも二人は、
「(そうした疑惑を知りながら)国民はわれわれを選んでくれた。その負託に応えなければならない」
と尻をまくる。公党のトップ二人に深刻な疑惑があり、それでも居直る二人を担ぐ政権党が、挙げて「検察との全面対決」をいい立てる。それも「国民が選んだ民主主義勢力」を自称しながらだ。問題の壮大なスリカエというしかない。
「大きなウソほど国民は信じる」
といったのはナチ党の宣伝相ゲッベルスだ。
コトは小沢が岩手の自宅近くに胆沢ダムを誘致し、この建設をめぐってゼネコンからカネをふんだくった疑惑だ。すでに水谷建設幹部が五千万円ずつ二回、計一億円を小沢の秘書に渡したと供述している。
ゼネコンは工事費にそのカネを上乗せする。まわりまわってそのカネは国民の負担となる。つまりは国民の血税を、小沢が権勢をカサに掠め取ったのではないかという疑惑だ。
そのカネの一部が、小沢が土地を購入したおりの経緯から見て、原資に充てられた疑いがある。検察が原資の趣旨を糺すのは当然の職分だ。なのに小沢は多忙を理由に事情聴取に応じない。井山裕太名人と碁に打ち興じ、家の子郎党を集めて居酒屋で連夜のカラオケだ。
自身に疚しいことがなければ、男らしく事情聴取に応じて、しかるべき説明をすれば足りる。子分も臭いメシを食わずにすむ。それができないから応じないと、誰しも思う。ヤクザの親分にも劣る対応だ。
党首も党員も民主勢力を自称するなら、血税が搾取されたかどうか、しっかり調べてくれよと督励するのが当然だ。ところが首相は検察を督励するどころか、その検察と闘えと小沢を督励する。話がサカサマだ。
鳩山と小沢の共犯意識
思うに鳩山と小沢には共犯者意識がある。その意識が右のセリフに表れた。
鳩山には贈与税逃れの前科がある。母親からもらった十二億円の「子ども手当」は生前贈与そのものだ。鳩山は当初、知らぬ存ぜぬとうそぶき、コトが露見するや「貸付金」だと主張した。借用書も返済期限もない。弟の邦夫が「私も母からもらった。親子の間に貸付金はあり得ない」といい出さなければ、「貸付金」で押し通すつもりだったに違いない。
鳩山はこれを月に一千五百万円の小口に分けていた。それも九十数人の偽名を使って、寄付を受けたかのように虚偽記載していた。大口なら贈与された十二億円に近い追徴税を取られているはずだ。知人の公認会計士にいわせれば、これほど故意・悪質な脱税もないという。
鳩山の犯意はハッキリしている。なのに六億円の追徴税で一件落着とされた。庶民がこの手を使えば、即お縄頂戴だ。追徴金も半分ではすまない。丸ごと持っていかれる。現に本稿を書いているそばで、テレビが四億円の脱税で業者が逮捕されたと報じている。首相だから手心を加えたとしか思えない。およそ社会的公平を欠く処置だ。
ファミリーのカネを政治に使ったのだからいいじゃないか、とする擁護論がある。これも違う。政治家にとって政治資金管理団体は金庫だ。死ねば子どもに相続される。現に鳩山も小沢も譲り受けた。政治という家業の金庫だ。他の家業とどこが違う?一説に鳩山の資産は八十六億円、小沢の資産は三十五億円。よほど汚いことをしなければ、この家業でこれほどの蓄財ができるか? いま小沢の胆沢ダムで、それが問われている。
全国の政治資金管理団体は六百五十を数える。土地等、不動産を買い漁っている団体は小沢の団体だけだ。だいたい政治資金で不動産を購入し、それを賃貸してカネを増やす等ということは、政治資金規正法を制定する際、想定外のことだった。これには検察もビックリしたと聞く。
「先生の趣味は不動産」と、小沢の秘書らはいう。小沢は車で移動中も物件に目を留め、「オイ、あの物件の資料を集めろ」等と指示する。すでに十二件の所有・賃貸が知られている。小沢は記者団に向けて弁護士の「確認書」を振りまわし、
「名義人は小沢一郎となっているが、実質は陸山会のものだ」
と自身の所有を否定したが、公証人のハンコがなければ何の証明にもならない。十二件の物件には例の政党助成金のチョロまかしが使われている疑惑がある。新進党と自由党の解党のおり、国庫に返却すべき政党交付金は二十二億円におよぶ。これをポケットに入れた疑惑だ。うち十五億円は自由党幹事長・藤井裕久の資金管理団体に入れたとされる。
これを国会で松岡利勝(のちに自殺)が追及した。藤井はコボした。
「困っちゃうな。オレ、ホントに知らないんだよ」
藤井の事務所が特段カネに潤った話は聞いたことがない。ホントに知らないものと思える。さきごろ藤井は財務相を辞任した。健康を理由の辞任だが、二十二年度の予算案を編成した財務相が、その審議を前に辞任するのは異常な事態だ。 ホントのところは、問題の十五億円について予算委員会で追及されれば立ち往生となる、それを避けるための辞任だったと、もっぱら見られている。
政党助成法をつくったのは小沢だ。以来、政党をガラガラポンするたびに、彼の財布は膨らむ。彼にとって勝機は商機だ。
「深沢銀行」にメスを
小沢は世田谷・深沢に住む。その自宅に家族しか入れない特別な部屋があり、巨額の現金が貯えられている。逮捕された元秘書・石川によれば「十億円はあるんじゃないか」という。この部屋を家の子郎党は隠語で「深沢銀行」と呼ぶ。
いま、その「深沢銀行」に司直がメスを入れようとしている。逮捕された石川議員の元秘書・金沢敬が、小沢事務所にガサ入れの寸前、書類の運び出しを手伝った。「間一髪だった。こんなものを押えられたら小沢先生をはじめみんな逮捕だ」「西松なんて一番金額が小さいですよね」……実に生々しい会話を証言している。この金沢が、小沢金脈解明のとば口だ。ワケのわからないカネがゴロゴロしているに違いない。師匠のゼニ丸こと金丸信の金庫と同じだ。
小沢一郎を要するに、政治家を自称するチンケな不動産屋だ。その金庫を調べるのに何の不都合もない。ただし、そのチンケな不動産屋が、いまや政権党を自在に動かす。もし小沢が今回の「危機」を生き延びればどうなるか。岩手・秋田は「小沢王国」と目されてきた。生き延びれば、日本全体が「小沢王国」となろう。まさに日本をハイジャックすることになる。
カネの面だけではない。小沢は何をするかわからない。すでにマニフェストにもない外国人参政権を打ち出している。習近平の天皇接見問題で見せた天皇軽視とも思える姿勢。さらには六百人を超える訪中団を引き連れた中国への傾斜。普天間問題の右往左往は、背後に「米軍の駐留は第七艦隊だけでいい」とした小沢の発言がある。この発言は鳩山の「駐留なき安保」発言と呼応する。
アメリカに拗ねて見せる前に、自前の防備を固める必要がある。その覚悟も準備もないままの反米ジェスチャはポピュリズム(大衆迎合)というしかない。
鳩山は口を開けば「国民のみなさんのお暮らしを守る」というが、その言葉と裏腹に事態は進行している。小沢の存在があるからだ。
小沢が「民主主義の危機」(!)を訴えるのに呼応して、メディアの一部に小沢擁護論を見受ける。正気かといいたい。むしろ小沢の所業は民主主義への挑戦だ。首相の鳩山もこれを許容する。二人がタッグで日本を危うくしている。ジャーナリズムが衝くべき問題はそこにある。
ところで法相・千葉景子が気になる。まさか指揮権発動はあるまいな。法相就任のおり、指揮権について問われ、「ちゃんと法律に書いてあることですから」と答えた。一抹の不安を感じる。(文中敬称略)
リベラルタイム3月号 「仄聞録」